明日は何かの日だったかな、青梅さんにはなんと説明しようと考えながら外へ出た。
「そうだ、帰るにしても、一体どうやって?」
「あの高台からがいいな」
具体的な帰り方ではなく、場所を伝えられてしまった。
星の観測高台からアリスと月に行ったことがある。月に行ったとき、アリスは遠くの方を見つめていた。ひょっとすると、見ていたのはスピカの方だったのかもしれない。
青梅さんのマンションに行ったが留守だった。大学に居るのかなとアリスと話して、マンションの駐輪場から森の抜け道へ入った。
森に入った途端に吐息は白くなり、その寒さは全身に伝わってきた。林道を歩いていると鹿たちがザザッと相変わらずの音を立てて、木蔭にその姿が見えた。残念ながら今日は梅の実を持っていない。ジッと鹿はこちらを見ているが、僕たちは余りの寒さに早々に林道を抜けた。白い吐息をはきながらコンビニの裏手に出ると気温が暖かく感じる。そんなはずはないのだが、なにぶん森の中が寒すぎるのである。
坂を下っていると、ちゃんちゃんこ姿の幸津先輩に出会った。この人にも一応報告をしておくべきかと思い足を止めた。しかしどう説明したものかとぼうっとしていると、「明日帰るね!」とアリスが快活に言った。
先輩はぽかんとした顔をした。さっき僕が同じような顔をしたような記憶がある。先輩はこれ以上話を聞きたくないと言う感じに、「そうかぁ、帰るんかぁ…」と言いながらふらふらと僕たちの脇を通り過ぎようとした。
「先輩、明日ひまだったら、高台に来てください」
ふらふらとしながら先輩はこくりと頷いた。こくりと頷いた衝撃で転けそうになる程にふらふらとしている。
坂を登っていく先輩を見ていると何度も足をつまづかせてばつの悪そうに足並みを正していた。余程にショックだったようである。