1. 落ちてきた少女の考察 - 9月22日 2

    アリスはこちらをじっと見ていた。吸い込まれそうなほどに青い瞳が、少し潤んでいてとても綺麗である。窓から吹き込んでくる風がアリスの髪の毛を柔らかく揺らしていた。
    おもむろに立ち上がったアリスは、僕が形成するこぢんまりとした布団の中に飛び込んできた。ただでさえこぢんまりとしている所を、上からぎゅぎゅっと押さえ付けられて、更に自分の身体を凝縮せねばならん事態となった。
    布団に凝縮されることなどなんら問題はなかったが、段々とアリスの体温で暑くなってきた。おまけにふわふわとした髪の毛がくすぐったい。いよいよ暑さに我慢が出来なくなってきて、プハッと布団から頭を出すと、アリスがころんと畳に転がった。転がったアリスは天井の方を見上げている。そのままなかなか起き上がらないので何かと思い、アリスの視線の方へ目をやってみると、まるまると太った赤金の金魚が居た。
    どこから入ってきたのか、金魚は空中をすいすい泳いでいる。金魚は灯りを付けているかのように光っていて、とても目立つ。金魚が動くと部屋に作られる影も動くほどに光っている。螺旋を描くようにすいすいと部屋中を好き勝手に泳ぎ回り、終いには窓から出て行ってしまったのである。
    僕もアリスも窓から出て行った金魚を眺めていた。しばらくはすいすいと泳いでいるのが見えたが、小さい金魚だったのであまり遠くに行かないうちに見えなくなってしまった。あれだけ部屋の中では光っていたのに、太陽のもとではただのまるまると肥えた金魚となっていた。
    ハッとした顔でアリスが僕のほうを振り向いた。そして言うのである。
    「沢渡に、聞いてもらわなくちゃいけない」
    「うん? なあに?」
    「わたしは、明日に帰らなくてはいけない」

     
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