1. 落ちてきた少女の考察 - 9月21日 6

    結果はぶどうの皮をフィルターにしたように見えるというものである。この劇的なスペクトルの変化が起こりうれば、幸津先輩がスピカを赤く見たことも頷ける。仮説だが、しかし面白い論文が出来た。
    大学構内はまだ人の姿があちこちに確認出来た。彼らは今日も大学に泊まって研究を続けるのかもしれない。そうなるとコンビニの売り上げがとてもあがることだろう。
    そうだ、店長に寂しがられていたので帰りしなコンビニに寄らなくてはいけないなとおもいながらアリスの方をみると、さっきのふわっとした笑顔は消えてまた一段とどんよりとしていた。海のほうの遥か遠くをやはりジッと眺めている。
    「アリス、本当にどうしたの?」
    「沢渡、あの男の子は、ちゃんと帰れたのかなぁ」
    「あの子か。きっとお母さんを見つけて走って行っちゃったんだよ」
    「そっか」と言い、微笑んでアリスは続けた。
    「わたしもそろそろお母さんを見つけなきゃ」
    ああ。アリスが余りに日常に馴染んでいたため、すっかり忘れていた。この子は未だに解明されていない不思議な現象である。空から落ちてきたように見えたが、いつの間にか腕の中に居た。僕は従兄弟の子としてアリスと過ごしている。
    アリスの突然の言葉に呆然としていると論文を落とした。アリスはそれを拾って、にこっと笑った。
    「沢渡、コンビニに行こう」
    足取りが非常に重い。大学の坂を降りて星の観測高台を真っすぐに、家に向かって坂道を登る。やはり坂は好きではない。
    コンビニは溢れるほどに人が居た。案の定泊まり込みで研究を続ける学生の買い出しである。店長とともにテキパキと青梅さんが手際良く仕事をこなしている。余りの人の多さで入るのを憚られるほどだ。店長側で買い物をすると、「オラ、今夜中に論文書き上げろよ!」と嫌な罵声が付いてくるようである。
    今日はゆっくりも出来そうにないので、入口で店長の知らない人への罵声を二度ほど聞いた所で退散をすることにした。出て行きがけに青梅さんが気付いてくれて、手を振ってくれた。僕もアリスも手を振り返した。

     
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