1. 落ちてきた少女の考察 - 9月21日 3

    どうも自分でうにだまを地面にこぼして、踏みつけて転んでしまったようである。自業自得といえよう。
    救急車を見送った野次馬の散った後にうにだまを拾っていると、おハゲ教授がひょいとうにだまを拾い、渡してくれた。
    「いや、参った。これでしばらく私が名実共に学科長ということだね」
    「そうですねぇ」
    参ったと言いながらおハゲ教授はどこか嬉しそうである。もしかするとうにだまを学科長にうにだまを踏ませたのはおハゲ教授なのではないかと思ったが、そんな恐ろしいことを口にすると単位が危ういので真実を藪の中に放った。
    「そういえば、昨晩田端教授に頂いた紙片を解読したのですが、とても有意義なデータでした」
    「ガハハ、そうだったかね」
    研究課題がまだ出来上がっていないのですと言ったら、とんでもなく怒られそうである。ガハハと笑いながらおハゲ教授は三号棟は昇らずに事務棟のほうへ向かった。学科長の怪我の報告などがあるのだろう。休みだというのに事務棟が忙しない日である。
    僕たちはうにだまを持ったまま三号棟を昇った。各階から学生の話し声が聞こえるので夏休みらしくない。五階に着いた時にも後輩が二人廊下に立っていて、挨拶をされた。
    誰もいない教授研究室にうにだまを置いて廊下に出て気がついたが、院生研究室が全部締まっていた。研究がはかどっていないのだろうか、院生全員が夏休みが開ける前に来るとは思わなかった。
    そのまま真っすぐに進むと入口から溢れそうなほど、学科研究室も結構な賑わいであった。一体どういうことか。同期の人間が僕を見るなり昨日の楽しげな賑わいの中にあった笑顔とは対照的な、とても疲れたような顔つきで話しかけてきた。
    「沢渡くん、こんなお昼から大学に来るなんて悠長ですね」
    「夏休みだし課題終わりそうだからいつ来たって良いだろう」
    その瞬間教室がざわめいた。視線を独り占めしてしまい、なんだかこそばゆい。

     
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