11月 2011
14件の投稿
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落ちてきた少女の考察 - あとがき
四ヶ月とちょっと、確か140日くらい、毎日毎日数百字の文章をちょこちょことウェブに上げるだけの行為を繰り返しているうちに、11万と7000字以上にものぼる文章を書き上げていました。物語の9月10日の二番目の話の時に現実世界と同じ時間になってから、いつの間にやら二ヶ月も差をつけられています。なんということでしょう。 思い返せばこの話を作ることになったきっかけは、2011年6月の二週目にR展という絵の展示をした時に遡ります。友人に急に、「空から女の子が降ってきたらどうする?」と言われました。最初は「ラピュタ的ななにかの話かしら」と思ったのだけど、すぐに「ちっちゃな子が!」と念を押されるのです。その友人は別の友人とその話で前日に盛り上がっていたとの事でした。そんなわけでアイデアを文章に起こさせて頂いたお礼をここで申し上げます。本当にありがとう。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月23日 2
星の観測高台を登りきると、ちゃんちゃんこが階段から真っすぐ行った崖の方に座っていた。こぢんまりとしすぎて本当にちゃんちゃんこしか見えていないが、恐らくあれは幸津先輩で間違いない。 「先輩」 やや遠めから声を掛けるとそのちゃんちゃんこはビクッとした様子であった。下手をすると崖から落ちそうであったが、落ちた所でちゃんちゃんこなら問題なかろう。 恨めしそうに振り向いた先輩は目が赤くなっていて、泣き濡れている様子だった。一体どれほど崖縁で泣いていたのだろうか。幸津先輩のことだから昨日ふらふらと坂を登っていく時からずっと泣き続けていたかもしれない。 「やぁ、みなさんお揃いやないか」...
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落ちてきた少女の考察 - 9月23日 1
その日はとても寒い日だった。アリスは昨晩、「一晩中沢渡と遊ぶ」と息巻いたが、年越しを待てなかった子どものように日を跨ぐ前に寝てしまった。 朝はアリスが先に起きていて、窓から外を見ている。あまりに寒いのでまたこぢんまりとした塊になろうとしたら、起きたことに気がつかれて布団を剥がれてしまった。 ぶるぶる震えながら起き上がると、部屋中にアリスの絵がたくさん貼ってあった。見たことある絵も、見たことの無い絵もある。アリスのノートを見ると、大分厚みがなくなっていた。たくさん絵を描いたんだなぁと思いながら部屋中の絵を眺めてみると、お祭りの絵や台風屋台の絵、月の絵やぶどうの絵などアリスが出会ったたくさんの出来事の絵であった。 アリスはお祭りの日に「楽しいことたくさんたくさんありますように」とお願いをしていた。たくさんたくさんの楽しいことに出会えたことは部屋中の絵が教えてくれている。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月22日 5
大学は昨日よりも人の数が多くなっていた。遅れて参上した研究課題の泊まり込み組だろうか。 レストハウスは文字通りにレストハウスと化していて、食堂は営業していないが椅子は空いていない。誰も姿勢を正して椅子に座っているものは居らず、だらだらと机に突っ伏しているのが見える。 事務棟の前には昨日病院に搬送されたハズの学科長が居た。思わず「あれ?」と声をあげると、学科長がブンブンと手を振りながら「やぁやぁ、沢渡くん」と声を掛けてくれた。 「学科長。もう腰は大丈夫なのですか?」 「こんな痛みに負けてるようじゃ学科長にはなれないなぁ。ところで見てくれよこれこれ」 そう言いながら学科長が差し出してきたのはうにだまであった。病院の売店の中にあったのだそうで、とても憎たらしい顔をしている。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月22日 4
明日は何かの日だったかな、青梅さんにはなんと説明しようと考えながら外へ出た。 「そうだ、帰るにしても、一体どうやって?」 「あの高台からがいいな」 具体的な帰り方ではなく、場所を伝えられてしまった。 星の観測高台からアリスと月に行ったことがある。月に行ったとき、アリスは遠くの方を見つめていた。ひょっとすると、見ていたのはスピカの方だったのかもしれない。 青梅さんのマンションに行ったが留守だった。大学に居るのかなとアリスと話して、マンションの駐輪場から森の抜け道へ入った。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月22日 3
突然そんなことを言うものだからぽかんとした顔をしてしまった。アリスはとても神妙な面持ちになっている。 「あの男の子のこと、知らないけど、知ってた。沢渡の書いた文章、よく解らなかったけど、解った」 どういうことだろうかと首を傾げていると、アリスは続けた。 「だから、明日に帰らなくてはいけない」 ぽかんとした顔のまま、アリスに幾度も質問を投げかけた。 以下はアリスから聞き取って整理した内容である。 アリスは明日帰らなくてはならない。これは今日でも良いらしい。昨日でも良かったらしい。この家に居られる最も長い日にちが明日だそうである。 あの少年については、遥か遠くに居るところを見たのを思い出したのだそうだ。遥か遠くに見た少年はずっと青白い光りに包まれていて、とても眩しかった。でも近くでその少年を見たことも無かったし、話したこともなかった。なので、少年と出会った時は少しも思い出せなかったと言う。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月22日 2
アリスはこちらをじっと見ていた。吸い込まれそうなほどに青い瞳が、少し潤んでいてとても綺麗である。窓から吹き込んでくる風がアリスの髪の毛を柔らかく揺らしていた。 おもむろに立ち上がったアリスは、僕が形成するこぢんまりとした布団の中に飛び込んできた。ただでさえこぢんまりとしている所を、上からぎゅぎゅっと押さえ付けられて、更に自分の身体を凝縮せねばならん事態となった。 布団に凝縮されることなどなんら問題はなかったが、段々とアリスの体温で暑くなってきた。おまけにふわふわとした髪の毛がくすぐったい。いよいよ暑さに我慢が出来なくなってきて、プハッと布団から頭を出すと、アリスがころんと畳に転がった。転がったアリスは天井の方を見上げている。そのままなかなか起き上がらないので何かと思い、アリスの視線の方へ目をやってみると、まるまると太った赤金の金魚が居た。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月22日 1
研究が完成した僕は、夏休み前半を思い出すように部屋でこぢんまりとした塊になった。もうあと十日ばかし、やることはなにもない。大学に赴けばまた課題の完成していない人間から鬼の形相を向けられて神輿のように担がれるに違いない。外は一段と寒くなってきたので、布団をかぶって凌ぐのが一番である。 しかし夏休み前半といまでは様子が違うのだ。こぢんまりとしているところを誰あろうアリスが許してくれなかった。文机の前に掛かった遮光カーテンを勢い良く開き、朝の光を取り入れて僕の身体から布団を剥ぎ取ったアリスは「お腹がすいた!」と言った。 何を隠そう自分も腹が減った。致し方がないので、よろよろとキッチンに立ち、「寒い寒い」とアリスと話しながら簡単に朝食を作る。畳ばかりの部屋なのになぜキッチンの前だけはフローリングになっているのだろうか。足が冷えて仕方がない。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月21日 6
結果はぶどうの皮をフィルターにしたように見えるというものである。この劇的なスペクトルの変化が起こりうれば、幸津先輩がスピカを赤く見たことも頷ける。仮説だが、しかし面白い論文が出来た。 大学構内はまだ人の姿があちこちに確認出来た。彼らは今日も大学に泊まって研究を続けるのかもしれない。そうなるとコンビニの売り上げがとてもあがることだろう。 そうだ、店長に寂しがられていたので帰りしなコンビニに寄らなくてはいけないなとおもいながらアリスの方をみると、さっきのふわっとした笑顔は消えてまた一段とどんよりとしていた。海のほうの遥か遠くをやはりジッと眺めている。 「アリス、本当にどうしたの?」 「沢渡、あの男の子は、ちゃんと帰れたのかなぁ」 「あの子か。きっとお母さんを見つけて走って行っちゃったんだよ」 「そっか」と言い、微笑んでアリスは続けた。 「わたしもそろそろお母さんを見つけなきゃ」...
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落ちてきた少女の考察 - 9月21日 5
「沢渡の論文を破いてしまえ!」 そう叫んだのは三回生の先輩である。なんと恐ろしいことを言う人かと危険を感じ、とっさに論文をアリスへ投げ渡した。アリスは論文を受けとるや、背後に隠し後ずさりをした。 後輩は泣き喚き、同期と先輩達はわあわあと僕を担ぎ始める。胴上げが始まるのではないかという雰囲気が漂い始めているが、祝賀の念ではなくただの八つ当たりからなる恨みが僕を担いでいるので大学合格以来の胴上げが無いのは知っている。 神輿のようにしばらく為すすべもなく上下させられていると入口のほうから怒声が響いた。 「こら、何をしているのか!」 おハゲ教授の御一喝である。自分神輿から解放された僕は、静まり返ってしまった担ぎ手たちの代わりに経緯を説明する羽目になってしまった。研究課題の論文が完成してうっかり喜んで出来たと言ったら担がれたというのはなんと間抜けな理由だろう。 「沢渡くん、まだ研究出来てなかったの」...
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落ちてきた少女の考察 - 9月21日 4
そこに居る人間はどうやら課題に全然手を付けていなかった駄目学生の集まりだったらしく、昨日はつかの間の休息であったようである。ただしその休息が終わるなりみんなで大学に籠って本を開いたり閉じたり、ペンのキャップを取ったり付けたり、頭を抱えたりぼりぼり掻いたりして研究課題をいかにして乗り切るか考えているとのことだ。 夏休みも終盤に差し掛かり、出遅れたなぁと思いながらも紆余曲折を果たし、結果教授の手助けを借りて後は論文に書き起せば完成する程度には研究を重ねてきた僕だから敢えて同期に「阿呆」とだけ言った。 「うっ…」 グサリとダメージを受けたらしき同期はおもむろに体勢を崩しよろめいた。 「だって、だって夏休みは楽しむものじゃないですか…」...
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落ちてきた少女の考察 - 9月21日 3
どうも自分でうにだまを地面にこぼして、踏みつけて転んでしまったようである。自業自得といえよう。 救急車を見送った野次馬の散った後にうにだまを拾っていると、おハゲ教授がひょいとうにだまを拾い、渡してくれた。 「いや、参った。これでしばらく私が名実共に学科長ということだね」 「そうですねぇ」 参ったと言いながらおハゲ教授はどこか嬉しそうである。もしかするとうにだまを学科長にうにだまを踏ませたのはおハゲ教授なのではないかと思ったが、そんな恐ろしいことを口にすると単位が危ういので真実を藪の中に放った。 「そういえば、昨晩田端教授に頂いた紙片を解読したのですが、とても有意義なデータでした」 「ガハハ、そうだったかね」...
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落ちてきた少女の考察 - 9月21日 2
「そうそう、店長がね、最近沢渡くんコンビニに来ないけれどどうかしたの? って。寂しがってるから後で寄ってあげてね」 そう言って青梅さんはぱたぱたと走って行ってしまった。青梅さんとあったことでアリスが少しだけ笑顔になったような気がする。 そういえば日課であったはずのコンビニへ通うことも日課とは言えなくなっていた。青梅さんのバイトの休みの日を知っていたからというのもあるが、なんだか最近はあちらこちらへ青梅さんたちと一緒に動き回っていたためにコンビニのことなどすっかり忘れていたのが要因である。 三号棟の前に行き着くと疎らにしか見えていなかった学生達が野次馬のように固まっていた。一体どうしたのかと僕とアリスもその野次馬に参加すると、うにだまがころころと地面に転がっていて、その先にはうちの学科長がころころと地面に転がっていた。...
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落ちてきた少女の考察 - 9月21日 1
「沢渡くん出来たよ出来たよ」 おハゲ教授がにこにことしながら渡してきたノートの紙片にはびっしりと数字と読み辛い達筆な文字が羅列されていた。解読するのに少し掛かったが、解読してみると僕の研究課題を淡々と完成させてしまっているデータ演算であった。 夏休み最終日に泣きながら親の手を借りて宿題をやる子どもの姿がよくテレビで映されていて、そんな馬鹿なと思ったものだが、まさか教授の力で夏休みの宿題たる研究課題が完成してしまうとは一体どういうことか。間違いないことだが、昨晩は仮説の話をしただけであって、なにも手を貸してくださいと言った記憶はないのだ。 しかしデータがあるのだから利用しようと思う。大学に向かって紙に起こせば課題が出来上がる。...
10月 2011
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落ちてきた少女の考察 - 9月20日 4
僕は教授にガスのフィルターの仮説について話した。研究課題の話であるとはとても言えないが少し話をしただけで、おハゲ教授は「おいおい、なんだいその楽しげな話は。でも座標軸がひょっとするとこっちのほうが…」と言いながら、ガスの発生率や座標についてを静かにノートと対話をし始める。なにかをブツブツつぶやいているが聞き取れない。時々フフッと笑って気味が悪い。一度おハゲ教授がノートに向かうとしばらく自分の世界から帰ってこないことで有名である。教授のノートを覗くものもあるが、大体が蜘蛛の子を散らすように解散した。大変申し訳ないことをしたと心の中で詫びた。...